非人称表現

ポイント

ドイツ語では、主語がはっきりしないときや、
特定の主語を言わなくてよいときに、es を使うことがあります。
この es を 非人称の es といいます。

  • In der Schweiz ist es wechselnd wolkig.
    スイスでは晴れたり曇ったりしています。
  • Am Nachmittag gibt es Regenschauer und vereinzelt Gewitter.
    午後にはにわか雨や、ときどき雷雨があります。

ここでの es は、「それ」という意味ではありません。

英語の it に少し似ていますが、ドイツ語では特に

  • 天気
  • 時間
  • 距離
  • 気分・体調
  • 決まり文句

などでよく使います。


1. es には2種類ある

まず、人称代名詞の es非人称の es を区別しましょう。


1-1. 人称代名詞の es

前に出た名詞を受ける 「それ」 の es です。

例文

  • Sie sehen dort drüben ein Haus.
    あそこに家が見えます。
  • Das Haus gehört Andreas.
    その家はアンドレアスのものです。
  • Ich glaube, es kostet viel Geld.
    私は、それはたくさんお金がかかると思います。

ここでの es は、前に出た das Haus を受けています。


1-2. 非人称の es

何か特定の物を指しているわけではない es です。

例文

  • In der Schweiz ist es wechselnd wolkig.
    スイスでは晴れたり曇ったりしています。
  • Am Nachmittag gibt es Regenschauer.
    午後にはにわか雨があります。

ここでの es は、「それ」という意味ではありません。


2. なぜ es が必要なのか

ここが大事です。

ドイツ語では、定動詞は第2位に来る という強いルールがあります。
これがいわゆる V2ルール です。

そのため、文の先頭に置くはっきりした主語がないとき、
とりあえず1番目の席に座って文を成立させる“身代わり” として、es が出てきます。

  • Es regnet.
    雨が降っています。
  • Es ist kalt.
    寒いです。
  • Es gibt hier viele Museen.
    この町には美術館がたくさんあります。

つまり、非人称の es は

主語の意味を強く持つというより、文の骨組みを作る役割

を持っていることが多いです。


3. 自然現象の es

非人称の es で最もよく出てくるのが、
天気・季節・明るさ・音・におい などです。


3-1. 天気を表す動詞

天気を表す動詞は、ふつう es を主語に取ります。

よく使う動詞

  • regnen
    雨が降る
  • schneien
    雪が降る
  • blitzen
    稲光がする
  • donnern
    雷が鳴る
  • hageln
    ひょうが降る
  • nebeln
    霧が出る

例文

  • Es regnet.
    雨が降っています。
  • Es regnet in Strömen.
    どしゃ降りです。
  • Es schneit ununterbrochen.
    雪が降り続いています。
  • Es blitzt.
    稲光がしています。
  • Es donnert.
    雷が鳴っています。
  • Es hagelt.
    ひょうが降っています。
  • Es nebelt.
    霧が出ています。

3-2. sein / werden を使う言い方

天気や季節は、動詞そのものだけでなく、
sein / werden + 形容詞・名詞 でもよく表します。

例文

  • Es ist warm.
    暖かいです。
  • Es ist kalt.
    寒いです。
  • Es ist heiß.
    暑いです。
  • Es ist kühl.
    涼しいです。
  • Es ist schwül.
    蒸し暑いです。
  • Es ist regnerisch.
    雨模様です。
  • Es ist sonnig.
    晴れています。
  • Es ist Winter.
    冬です。
  • Es ist dunkel.
    暗いです。
  • Es wird dunkel.
    暗くなります。
  • Es wird hell.
    明るくなります。

ポイント

ここでは、次の2つを分けて考えると整理しやすいです。

  • Es regnet.
    → 雨が実際に降っている
    → 動詞型
  • Es ist regnerisch.
    → 雨っぽい天気だ
    → 状態の説明

3-3. 音・においなど

何がそうしているのかを言わずに、
現象だけを言うときにも es を使います。

例文

  • Es riecht gut.
    いいにおいがします。
  • Es riecht übel.
    いやなにおいがします。
  • Es riecht nach Fisch.
    魚のにおいがします。
  • Es klopft an der Tür.
    ドアをノックする音がします。
  • Es klingelt.
    ベルが鳴っています。

4. 時間・距離・所要時間の es

時間や距離でも、es はとてもよく使われます。


4-1. 時間

例文

  • Wie spät ist es?
    何時ですか。
  • Es ist 9 Uhr.
    9時です。
  • Wie viel Uhr ist es?
    何時ですか。
  • Es ist 18 Uhr.
    18時です。

4-2. 距離

例文

  • Wie weit ist es bis zum Bahnhof?
    駅まではどのくらいありますか。
  • Es ist ungefähr 500 Meter.
    およそ500メートルです。

4-3. 所要時間

例文

  • Wie lange dauert es mit der U-Bahn?
    地下鉄で行くとどのくらいかかりますか。
  • Es dauert etwa eine halbe Stunde.
    約30分かかります。

4-4. 過去からの距離感

例文

  • Meine Studentenzeit? Es ist schon lange her.
    私の学生時代ですか。それはもうずっと昔のことです。

5. 気分・体調では「人」が3格になる

ここが、日本語話者にとって特に大事です。

ドイツ語では、「私は寒い」「私は元気だ」のような表現で、
自分が主語にならない ことがよくあります。

つまり、

  • 日本語:私は寒い
  • 英語:I am cold.

に引っぱられて、

  • Ich bin kalt.

のように言いたくなりますが、これは危険です。

ドイツ語では、

状況が、その人に対してどう感じられるか

という形で言うことが多く、
その人は 3格 になります。


5-1. Mir ist kalt. のしくみ

  • Mir ist kalt.
    私は寒いです。

これは直訳すると、

私にとって、寒い状態だ

という感じです。

つまり、

  • mir = 私に(3格)
  • ist kalt = 寒い状態だ

です。


5-2. よく使う形

例文

  • Mir ist kalt.
    私は寒いです。
  • Mir ist warm.
    私は暖かいです。
  • Mir ist übel.
    私は気分が悪いです。
  • Es ist mir kalt.
    私は寒いです。
  • Es ist mir übel.
    私は気分が悪いです。

ポイント

このタイプでは、文頭に別の語が来ると es が省略される ことがあります。

  • Es ist mir kalt.
  • Mir ist kalt.

どちらも使えます。


5-3. 心理現象

例文

  • Es graut mir vor dem Lehrer.
    あの先生を思うと、私はぞっとします。
  • Mir graut vor dem Lehrer.
    あの先生を思うと、私はぞっとします。
  • Es bangt dem Studenten vor der Prüfung.
    その学生は試験のことを思うと不安です。
  • Dem Studenten bangt vor der Prüfung.
    その学生は試験のことを思うと不安です。

5-4. 生理現象

例文

  • Es friert mich an den Füßen.
    私は足が冷えます。
  • Mich friert an den Füßen.
    私は足が冷えます。
  • Es ekelt mich vor der Küchenschabe.
    私はゴキブリが気持ち悪くてたまりません。
  • Mich ekelt vor der Küchenschabe.
    私はゴキブリが気持ち悪くてたまりません。

ポイント

  • mir ist kalt / mir ist übel のような型では 3格
  • mich friert / mich ekelt のような型では 4格

になることがあります。

初級ではまず、

  • Mir ist kalt.
  • Mir ist übel.

をしっかり覚えるのがおすすめです。


6. Es geht mir gut. のしくみ

これも超重要です。

  • Wie geht es Ihnen?
    お元気ですか。
  • Danke, es geht mir gut.
    ありがとうございます。元気です。

ここで初心者は、

  • Ich bin gut.

と言いたくなりがちですが、それは不自然です。


6-1. 構造

Es geht mir gut. は、

  • es = 状況・事態
  • geht = うまく運ぶ
  • mir = 私にとって
  • gut = 良く

という構造です。

つまり、

私にとって、状況がうまくいっている

という感じです。

だから、

  • Ich bin gut.
    私はよい人間です / 私は上手です

とは別物です。


6-2. よく使う形

  • Wie geht es dir?
    元気?
  • Es geht mir gut.
    元気です。
  • Es geht ihm nicht gut.
    彼は具合がよくありません。

7. es gibt は必ず4格

es gibt は、「〜がある」という意味です。
英語の there is / there are に近い表現です。

でも、ドイツ語では

gibt のあとに来る名詞は必ず4格

です。

ここはとても大切です。


7-1. なぜ4格なのか

gibt は動詞 geben(与える) の形です。
そのため、もともとの動詞の性質を引きずって、

後ろに来るものは4格

になります。


7-2. 例文

  • In Japan gibt es viele Berge.
    日本には山がたくさんあります。
  • Heute gibt es im Fernsehen ein Fußballspiel.
    今日はテレビでサッカーの試合があります。
  • In dieser Stadt gibt es viele Museen.
    この町には美術館がたくさんあります。
  • Es gibt einen Baum vor dem Haus.
    家の前に木が1本あります。

ポイント

  • ein Baum → 1格
  • einen Baum → 4格

です。

つまり、

  • ❌ Es gibt ein Baum.
  • ⭕ Es gibt einen Baum.

です。


8. 非人称の es を使う決まり文句

非人称の es は、決まり文句でも非常によく使われます。


8-1. es geht D

「Dの調子は…だ」

例文

  • Wie geht es Ihnen?
    お元気ですか。
  • Danke, es geht mir gut.
    ありがとうございます。元気です。

8-2. es geht D um A

「Dにとって大事なのはAだ」

例文

  • Es geht ihm nur ums Geld.
    彼にとって大事なのはお金だけです。

8-3. es handelt sich um A

「問題になっているのはAだ」「Aのことだ」

例文

  • Es handelt sich um ein wichtiges Problem.
    それは大切な問題です。
  • Bei dem Gespräch handelt es sich um die Schule.
    その話し合いで問題になっているのは学校のことです。

8-4. es schmeckt D

「Dにとっておいしい」

例文

  • In diesem Restaurant schmeckt es mir gut.
    このレストランの料理は私にはおいしいです。

8-5. es gefällt D

「Dにとって気に入っている」

例文

  • Es gefällt mir sehr in Bremen.
    私はブレーメンでの暮らしがとても気に入っています。
  • Die Stadt Bremen gefällt mir sehr.
    ブレーメンという町が私はとても気に入っています。

8-6. es tut mir leid

「申し訳ありません」「残念です」

例文

  • Es tut mir leid, aber ich habe keine Zeit.
    申し訳ありませんが、私は時間がありません。
  • Es tut mir leid um ihn.
    彼が気の毒です。

9. es が省略できる場合・できない場合

ここは整理して覚えると混乱しません。


9-1. 省略できることがある

心理・生理表現や一部の述語表現では、
文頭以外なら es が省略されることがあります。

  • Es ist mir kalt.
  • Mir ist kalt.
  • Es graut mir vor dem Lehrer.
  • Mir graut vor dem Lehrer.

9-2. 省略できない

自然現象では、es は基本的に必要です。

  • Es regnet heute.
    今日は雨が降っています。
  • Heute regnet es.
    今日は雨が降っています。

ここでは regnet に対応する主語の席を埋めるために、
es が必要です。

  • ❌ Heute regnet.
  • ⭕ Heute regnet es.

10. 会話と文章で確認しよう

例文

  • Heute ist Sonntag.
    今日は日曜日です。
  • Es ist schon 5 Uhr.
    もう5時です。
  • Seit Morgen regnet es ununterbrochen.
    朝からずっと雨が降り続いています。
  • Morgen gibt es eine Prüfung.
    明日は試験があります。
  • Mir bangt vor der Prüfung.
    私は試験のことを思うと不安です。
  • Denn bei der Prüfung handelt es sich um Deutsch.
    その試験はドイツ語だからです。
  • Ich verstehe Deutsch nicht gut.
    私はドイツ語があまり分かりません。
  • Mir graut vor dem Deutschlehrer.
    あのドイツ語の先生を思うとぞっとします。

まとめ

この課では、非人称の es を学びました。


非人称の es がよく使われる場面

  • 天気
  • 季節
  • 時間
  • 距離
  • 所要時間
  • 気分や体の感じ
  • 決まり文句

まず覚えたい表現

  • Es regnet.
    雨が降っています。
  • Es ist kalt.
    寒いです。
  • Wie spät ist es?
    何時ですか。
  • Es gibt …
    〜があります。
  • Wie geht es Ihnen?
    お元気ですか。
  • Mir ist kalt.
    私は寒いです。
  • Es tut mir leid.
    申し訳ありません。

大切なポイント

  • es が「それ」を指すこともある
  • es が何も指さないこともある
    → これが 非人称の es
  • 非人称の es は、
    文の1番目の席を埋める“身代わり” の役割を持つことがある
  • Es geht mir gut.
    「私は良い」ではなく、
    “私にとって、状況がうまくいっている” という構造
  • Mir ist kalt. のように、
    人は3格になることが多い
  • es gibt のあとは 必ず4格